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大人になるとなりやすいむし歯?!根面う蝕ってどんなもの?

2024年9月24日

昔に比べて、みなさんがお口の健康に注意されるようになって子どものむし歯は減少傾向にあります。しかし、その一方で高齢者の間で「大人のむし歯」が注目されているのをご存知でしょうか?
「8020運動」というの80歳で歯が20本以上残っている状態を目指そうという活動が盛んに行われてきて、歯が残っている割合というのは高くなっています。しかし、残っている歯がむし歯になっている方も少なくありません。特に、大人のむし歯ともいわれる「根面う蝕」に関しては、増えているという調査結果もあります。大人はむし歯というよりも、歯周病などの対策をきちんとしなければと思われる方も多いと思いますが、年齢が上がるにつれて、歯周病リスクと同様にむし歯のリスクもどんどん高まっていきます。今回は、特に中高年の方が注意していくべき大人のむし歯である「根面う蝕」についてご説明していただきます。

【根面う蝕ってどんなもの?】

う蝕とは、むし歯のことです。ですので、根面う蝕とは歯の根っこの面にできたむし歯のことを意味します。本来ならば、歯の根っこは歯ぐきに埋もれていて見えることはありません。しかしながら、加齢や歯周病などにより歯の根っこが露出してきて、その部分にむし歯ができてしまうのです。

むし歯のできるメカニズムというのは、大人も子供も一緒です。

通常、歯の頭の部分は硬いエナメル質と呼ばれる組織で覆われています。このエナメル質は酸に溶けにくく、とても硬いものであり、その下にある象牙質という組織を包んでいます。象牙質はエナメル質に比べて酸に弱いため、むし歯になりやすいので、一度むし歯になってしまった場合の進行も早い傾向があります。

歯の根っこにはエナメル質はないため、表面は象牙質で覆われています。本来ならば歯ぐきで覆われているため直接象牙質が刺激をうけることはないのですが、中高年の方は歯ぐきのラインが下がってきているため、歯ぐきで覆われていた象牙質が食べ物や飲み物などの酸にさらされます。つまり、歯の根っこの表面が溶かされて根面う蝕ができてしまうのです。歯ぐきがしっかりしているということは、歯の根っこのガードをしてくれているということにもなるんですね。

 

【根面う蝕になりやすい人の特徴】

①歯周病が進行している

根面う蝕は歯の根っこのむし歯ですので、歯周病が進行して、歯ぐきが下がっている人は根面う蝕になりやすくなります。

歯周病が進行すると、歯周病の細菌によって歯ぐきが腫れるだけでなく、顎の骨が溶けて、最終的には歯ぐきも下がってしまいます。結果として、歯がグラついたりかみしめると違和感がある感じがするんですね。歯周病の進行は痛みを伴わないため、気づいた時には歯周病が重症化していることも多く見られます。

 

②間違ったブラッシング

ゴシゴシと力強く歯ブラシをしている方は、ブラシの圧が強すぎたりして歯ぐきを傷つけている可能性があります。歯ぐきは思っている以上にデリケートな組織ですので、力を入れすぎたブラッシングによって歯ぐきを傷つけてしまい、それが原因となって歯ぐきが下がってしまうこともあります。その結果、歯の根っこが露出してしまい根面う蝕になることがあります。
一般的には、歯ブラシの適正なブラッシング圧は100g~200g程度です。分かりやすいのは、歯ブラシの毛先を歯に当てたときに毛先が広がらないくらいの力加減です。実際にブラッシングの際にどのくらいの圧なのか、力加減をみてみるのもいいでしょう。思った以上に力が入っている方も多いのではないでしょうか。
最近では、お口のケアを頑張りすぎて、このように歯を磨きすぎている方も少なくありません。間違った磨き方は習慣になっているため、ご自分ではなかなか気づかないものです。頑張って磨いているのに歯ぐきが下がった気がする方や、思い当たる症状のある方は、歯科医院でご自身のブラッシング方法について、一度指導を受けてみるのもいいでしょう。

 

③歯ぎしりや食いしばる癖がある

歯ぎしりや食いしばりの力というは、実はとても大きな力がかかっています。強い方になると、70kgを超えるような力がかかることもあり、気づかないうちに歯や歯を支える骨にダメージを与えている可能性があります。

もしも日頃から歯ぎしりや食いしばりをしていると自覚がある場合は、歯槽骨(歯を支える骨)の吸収や、歯肉退縮(歯茎が下がる現象)を起こす原因になりますので、歯科医院でチェックを受けるのをおすすめします。骨や歯ぐきは一度下がってしまうと、なかなか元には戻りません。歯ぎしりをよくする方は、寝るときにマウスピースを装着するなどして歯を保護することで歯肉退縮を防ぐことができますのでご相談ください。

 

④加齢変化で歯ぐきが下がってきた

歯周病も進行しておらず、特に歯ぐきに異常がなくても、年齢を重ねることで徐々に歯を支えている歯槽骨が痩せていきます。加齢変化の一種です。歯を支える骨が痩せてしまうと、それに伴い歯肉も衰えて下がってきてしまいます。
歯周病などの病気が原因で歯肉が退縮することを「病的歯肉退縮」と呼びますが、一方で加齢による歯肉退縮は「生理的退縮」と呼ばれ、一般的には10年で2ミリ程度、歯肉が退縮すると言われています。加齢変化はどうしようもないものですが、その変化を最低限に抑えるためには定期的な歯科医院での検診やメンテナンスも重要とされています。

 

⑤口の中が乾燥している(ドライマウス)

口の中は通常、唾液によって潤いが保たれています。唾液の分泌が低下して、お口の中が口が乾いている症状のことを「ドライマウス(口腔乾燥症)」といいますが、高齢になるほどその症状が強くなる方も多くなります。実際に年々、口の中の潤いが減少していると感じている方もいらっしゃるかもしれません。

唾液は加齢によっても唾液を分泌する機能が低下することはありますが、薬の副作用やストレス、緊張によっても唾液の量や質は変化します。ドキドキしたときは口の中が乾燥しますよね。これは交感神経が刺激されているので起こります。

また、全身の病気でいうと、糖尿病や甲状腺機能障害、シェーグレン症候群などが影響している場合もあります。口の乾燥状態は、単一の原因があることもありますが、加齢や全身の病気、服用薬剤が複合的に唾液分泌に影響すると考えられています。
お口の中のが乾燥するとむし歯にはもちろんなりやすくなりますが、歯周病も進行しやすくなりますし、細菌が増加しやすいので口臭の原因にもなります。

 

【根面う蝕を防ぐにはどうしたらいいの?】

根面う蝕は歯の根っこのむし歯です。ですので、まず第一には歯の根っこを露出させないことが重要です。つまり、歯ぐきが下がらないようにしていくことが大事になってきます。
歯周病の症状がある場合には、これ以上進行しないために歯周病の治療が必要ですし、ブラッシングの圧が強い人は歯科医院で適切なブラッシング圧を身につけることもいいでしょう。

歯ぎしりや食いしばりの癖がある方は、その癖に気づいてできるためやめるように努めたり、マウピースを装着してみるのもいいでしょう。加齢変化や全身疾患によるお口の変化は定期的な歯科医院での検診で早期に発見もできますし、対応が可能な場合も多くあります。

歯の根っこが出るのを防ぐためには、早めに歯科医院を受診して、自分の口の状態を把握し、適切な処置を受けるのも重要です。

 

また、むし歯に有効な成分として皆さんもご存知のフッ素がありますが、ドラックストアなどでも高濃度のフッ素(1,000~1,500ppm)が配合された歯磨き剤が置いてあります。そのような商品をうまく活用するのも一つの手です。

 

 

【OCEAN歯科からのメッセージ】

歯ぐきが下がって歯が長くなってきたなと思う方も少なくないでしょう。今回は、そのような方がなりやすい歯の根っこのむし歯についてご説明しました。

実際にご自分では見ても分からないことも多いと思います。少しでも心当たりがあったり、不安に思われることがありましたらお気軽にご相談ください。

歯みがき以外でのインプラントのケアの仕方

2024年9月15日

インプラントの状態を維持するために、歯ブラシによる歯みがき以外にできることは他にもあります。インプラント治療後の歯のケアは歯みがきだけではありません。残された天然の歯も大切にしなければならないため、歯みがき以外の方法でケアしていくのがおすすめです。また、歯みがきをする際の歯ブラシの選び方にも注意するポイントがあります。特にインプラントの手術後すぐには今までどおりの歯ブラシではケアしにくいこともありますので、どのようにしていけばいいかを覚えておくといいでしょう。

【インプラント治療後の歯ブラシの毛先のかたさ】

インプラント治療後すぐは、毛先のやわらかい歯ブラシを使用するのがいいでしょう。治療後すぐの歯ぐきは、手術による傷がある状態です。ゴシゴシと普段使っていた歯ブラシでみがいてしまうと、傷が治るのを遅くしてしまう可能性があります。傷口の治りをよくするためにも、毛先のやわらかい歯ブラシで強くこすらず、優しく丁寧にみがかなければなりません。

もしも普段から硬めの歯ブラシを使っている場合は、すぐに元の歯ブラシを使用しない方がいいでしょう。インプラント部分は、歯というより歯ぐきに対してのケアなので、普段の硬い歯ブラシに慣れている方ではやわらかいものは違和感を感じてしまうかもしれません。しかし、インプラント治療後ずっとやわらかめの歯ブラシしか使えないわけではありませんので安心してください。インプラントの手術後におすすめされる歯ブラシを使って、しばらくして傷の部分が安定すればお好みの歯ブラシに戻すことも可能です。傷が治るまでは歯科医師の指導に従っておすすめの歯ブラシを使用するのがいいでしょう。

 

【毛先の太さに関して】

インプラント治療を行ったら、その歯自体はむし歯にはなりません。しかしながら、歯ぐきの周りは今まで通り変わりませんので不潔にしたら炎症が起こります。ご自分の歯も日頃のケアを怠ると歯周病(歯周炎)になるのと同様に、インプラントの周りも不潔な状態が続くと「インプラント周囲炎」という炎症が起こります。これはインプラントと歯ぐきの隙間に入り込んだ歯周病菌によって起こるインプラントに特有の病気です。予防には日頃のケアの時に、この隙間に入り込んだ汚れなどを取り除く必要があります。そのため、インプラント治療を行った歯には、その隙間に入り込むような毛先が細い歯ブラシを使用するのがおすすめです。

歯ブラシを選ぶ際には「極細」や「超極細」と表記のある歯ブラシを使用するといいでしょう。インプラント周囲炎が発生すると、インプラントが脱落する原因にもなります。せっかく治療したのに長持ちしないのでは意味がありません。毛先の細い歯ブラシで歯ぐき周りに汚れがたまらないようにしていきましょう。

 

【タフトブラシやフロスも使用する】

インプラント治療後は、歯ブラシ以外の方法でもケアをした方がいいでしょう。歯ブラシを使用することで歯やインプラント周囲をある程度清潔に保つことができます。しかし、歯ブラシだけでは歯の汚れを取り除くのに限界もあるのです。そこで、歯の隙間を掃除できるフロスや歯間ブラシ、タフトブラシなどの補助清掃器具を使用することをおすすめします。

毛先の細い歯ブラシを使用しても、歯の隙間や歯ぐきの近くまではなかなかブラッシングできないこともあります。フロスや歯間ブラシはインプラント周囲炎に対してだけではなく、残っている歯のむし歯や歯周病予防にもなります。奥歯の裏側や一番奥の歯の後方も歯みがきが難しい場所なので、タフトブラシなどを活用してケアをしていきましょう。

歯やインプラントのケアと言ってもやることは実にさまざまです。どんな道具を選べばいいのか、どのように清掃していけばいいのか分からない方もいらっしゃるかもしれません。口の中の環境は人によって異なりますので、ひと括りにどんなものがいいのかをおすすめできるものでもありません。無理に清掃器具をねじ込むことで詰め物を傷つけてしまったり、外れてしまうこともありますので悩まれているときはお声がけください。使用器具や清掃法までをご説明していきます。

 

 

【OCEAN歯科からのメッセージ】

インプラント治療後にはどのようにケアをしていくべきかをご説明していきます。これからインプラントと長く付き合っていただくためには大切な内容です。

また、ご自身でのケアと歯科医院でのメンテナンスをしっかりしておけば、インプラントは一般的に言われている寿命以上に使い続けることも可能です。インプラント治療後の口の環境を守るためにも、自力でのケアと並行して歯科医院でのメンテナンスを受けるのがいいでしょう。インプラントだけではなく残されたご自身の歯の状態の確認をして、早めに処置していきましょう。

インプラント治療後の歯みがき粉の選び方

2024年8月30日

インプラント治療を受けた方やこれから受けられる方、その後の毎日のケアをどうしたらいいか

が分からずお困りかもしれません。インプラントは人工の歯ですが、治療を受けた後には今まで通り毎日のブラッシングなどのセルフケアを行う必要があります。しかし、インプラントを埋入した後のブラッシングでは、使用する歯みがき粉に注意しなければなりません。インプラントを長持ちさせるために、ぜひ覚えておいてください。

 

【インプラント治療後に使用する歯みがき粉】

結論から先に言いますと、インプラント治療後に使用する歯みがき粉は市販のものでも問題ありません。歯科医院が推奨するものでなければいけないと思っている方もおられるかもしれませんが、選び方に気を付けていけば市販のものを使っても大丈夫です。

まず、インプラント治療後の歯みがきの目的を考えていきましょう。インプラントそのものを清潔に保つことはもちろんですが、歯みがきの目的はそれだけではありません。歯ぐきのマッサージや残っている自分の歯をみがくこと、自分の歯とインプラントの隙間を清潔に保つことも重要です。インプラントそのものはセラミックでできているので、むし歯になることはありません。しかしながら、その周りに関してはインプラント治療をする前と同じようにケアをしていく必要があります。インプラント治療後はインプラントそのものよりも、その周囲を健全に保つことを重視するといいでしょう。特に歯ぐきのケアは重要です。もしもケアをサボってしまい、歯ぐきが炎症をおこすと、最悪の場合はインプラントが脱落する原因にもなります。また、残っている自分の歯に異常があると、そこから歯周病になってしまう可能性もあるので、日頃のケアはしっかりとやっておきましょう。

 

 

【具体的にどんな歯みがき粉を使ったらいいの?】

①フッ素が入っているものでもいいの?

「フッ素入り」の歯みがき粉は市販でもよく売られています。フッ素はむし歯予防などに効果があるとご存知の方も多いと思いますが、インプラント治療をしていても使用していいのかという疑問を持たれるかもしれません。

フッ素は、使用量によってはインプラントを腐食させてしまう効果があります。しかしながら、日本で市販されている歯磨き粉に含まれているフッ素の濃度は、1,000~1,500ppm程度です。このフッ素濃度ではインプラントは腐食しませんし、インプラントが腐食してしまうような濃度の歯みがき粉は市販されていませんので、フッ素が入っているからといって気にする必要はないでしょう。どうしても気になる場合は、購入前にパッケージの裏面を確認してみてください。

フッ素には歯をむし歯から守る効果があります。また、同時に歯質を強化する役割もあります。そのため、ご自分の天然の歯のケアのためには使用することをおすすめします。

 

②研磨剤が入っているものはどうなの?

研磨剤入りの歯みがき粉を使用することで歯の表面についた着色汚れをとることができるため、使用している方も少なくないでしょう。市販のものの中には歯みがき粉の種類によって研磨剤の粒子の大きさも違うものもあり、お好みに応じて使い分けられるようにされています。

しかし、インプラント治療後に使用する歯みがき粉として、研磨剤が配合されているものは基本的にはおすすめできません。研磨剤入りの歯みがき粉は、汚れは確かに落ちます。ですが効果は一時的なものであり、研磨剤によって削れた部分に汚れが付きやすくなってしまいます。これはインプラントだけではなくご自分の天然の歯にとっても同じことで、研磨剤の配合された歯みがき粉を常用することで削れた部分にはまた汚れが付きやすくなってしまいます。

インプラント治療後に研磨剤入りの歯みがき粉を使用すると、インプラントもダメージを受けてしまうため、あまりおすすめはしていません。研磨剤が歯ぐきとインプラントの隙間に入り込んで炎症を起こしてしまう可能性もあります。

ただ、粒子の粗い研磨剤ではない、低研磨のもので歯科医院で販売されているものや「炭酸カルシウム」「ケイ素」を含まないものだと安心です。市販の歯みがき粉の中でどれを選んでいいのか分からない、選ぶのが面倒だという方は、歯科医院で推奨している歯みがき粉を使うのが安心です。歯科医院で取り扱いがあるものは、歯を傷つけるような素材は入っていないことがほとんどです。また、研磨剤の中でも「炭酸カルシウム」や「ケイ素」といった比較的粒子の粗いものが入っていないものを選ぶのも効果的です。

歯みがき粉の成分表に、研磨剤入りとは書かれずに「顆粒入り」と記載されているものもありますが、これも研磨剤と同様におすすめできるものではありません。もしもドラッグストアで購入する際には、必ず裏面の成分表示を確認しましょう。

 

③「化粧品」と「医薬部外品」だとどちらがいいの?

ドラッグストアなどで売られている歯みがき粉には「化粧品」に分類されるものと、「医薬部外品」に分類されるものがあります。これらの大きな違いは成分です。

化粧品の扱いをされるものは、研磨剤や香料、発泡剤が混ざっているものです。一方で、医薬部外品として扱われるものは、フッ素などの有効成分が含まれているものになります。パッケージをよく見るとどちらかの表示が書いてあると思いますので、しっかり見て判別していきましょう。

では、どちらを使うのがいいのかというと、ご使用になる方のそれぞれのお好みや口の状態に合わせて適切なものを選んでいくのがいいでしょう。しかし、②で示したように、研磨剤が含まれている歯みがき粉はおすすめしにくいというのが正直なところです。気になる場合は、医薬部外品の表示がある歯みがき粉を使用するのがいいのではないでしょうか。また、ご自身の口の中の状態がよく分からないという方はスタッフにご相談ください。

 

 

【OCEAN歯科からのメッセージ】

「インプラントは人工物だから」と日頃のケアをサボってしまってはせっかくのインプラントも長持ちしません。インプラント治療は歯科医院で行うものですが、その後は自分の歯と同様に毎日の丁寧なケアが重要です。間違ったケアをしないよう、ご自分の歯と同様にしっかりと守っていきましょう。

歯科検診について ~COやC1ってどういう意味?~

2024年8月18日

学校や会社などで歯科検診を受けた時、歯科医師の先生が口の中をみて「7番まる、6番C1、5番まる、4番CO」などと言っているのを聞いた頃があると思います。奥から順番に小さいミラーで口の中の全体をチェックしているのは分かるけれど、歯科医師の先生は一体何を見ているのか気になりますよね。また、その時に記録した検診結果の用紙に英数字などが書いてあって、疑問に思うこともあるでしょう。先生が何やら沢山の用語を言っていて、注意して聞いていても聞き慣れない言葉でなんだか分からないと思われているかもしれません、一体、どれが悪くてなんて言っていたら大丈夫なの?と心配になってしまいますよね。

今回はそのような歯科検診での用語についてご説明していきます。

 

【歯科医師が言う用語】

まずは、歯科検診で歯科医師がどんな用語を言っているかについてご説明します。

数字では1~8、アルファベットではAからEなど聞いたこともあるでしょう。また「まる」や「C0(シーオー)」「C1(シーワン)」「C2(シーツー)」「C3(シースリー)」「C4(シーフォー)」なども聞いたことがあるかもしれません。

他にも、歯科医師が何か別のことを言うこともありますが、ほとんどが上記のような用語を使っていると思います。以下でそれぞれについて解説していきます。

 

①数字1~8、アルファベットA~E

この数字ですが、歯1本ずつについている番号で、歯の種類によって異なります。

大人の歯は、親しらずも全て入れると、上下全部で32本の歯があります。その1本ずつに、それぞれ番号が付いています。数字は1から8までしかありませんが、これに右上、左上、右下、左下とつければ、どの歯のことを言っているのかが分かります。

まず1番ですが、これは前歯のことを意味します。

真ん中にある大きな2本の前歯です。上下左右、合わせて4本あります。これらはすべて1番です。これに右上とつければ、「右上の前歯」のことを意味します。

この1番を基準にして、そこから奥に向かってどんどん数字が増えていきます。つまり、上下左右の1番から奥に向かう隣の歯は2番で、それから順番に数字が増えていきます。

このような感じでそれぞれ歯は数字が割り振られており、7番が永久歯の一番奥の歯ということになります。親知らずがある場合は、親知らずは8番目の歯になります。

このように数字1~8で表されるものは永久歯です。

次に乳歯ですが、永久歯と違って数字の番号では表しません。

乳歯はアルファベットで表します。アルファベットのA~Eで、永久歯と同じくAが前歯で、奥歯に近づくにつれ、B、C、D、Eとなります。

数字やアルファベットは歯の種類を意味するものということですね。

 

②まる、斜線、バツ、三角(△)

それぞれの意味は以下のものとなります。

まる(⚪︎):以前はむし歯だったけれど、治療してある歯(治療済みの歯)

斜線(/):むし歯でもなく過去に一度も治療してない健全な歯

バツ(✖️):要注意乳歯

残すかどうか判断する必要のある乳歯

三角(△):何らかの理由でなくなってしまっている歯(乳歯には使用しない)

既に抜いた歯やもともと存在しない歯のこと

これらの記号は歯の状態を示しています。

 

 

③C0、C1、C2、C3、C4

まずCと言われているのは、「虫歯」を意味しています。歯科検診で先生がもし「C」と言っていたら、むし歯があるということですね。

そして、このCにはC0、C1、C2、C3、C4の5段階のレベル分けがあります。それぞれのレベルが分かるには、歯の構造を理解する必要があります。歯というのは「エナメル質(歯の表面)」とその内側にある「象牙質」、そして神経の通る「歯髄」があります。これを踏まえた上でC0~C4をご説明していきます。

 

・C0(シーゼロ)

初期のむし歯。

自覚症状は出ないほどの歯の表面の小さなむし歯です。通常のむし歯治療のように削ったりということはせずに、再石灰化での治癒を期待できる程度のものです。

 

・C1(シーワン)

歯の表面のエナメル質に小さな穴が開く程度のむし歯です。この大きさのむし歯では、痛みを感じることがありません。この段階での治療であれば、少しだけ削ってレジンという樹脂を詰めて1回の処置で終わります。

 

・C2(シーツー)

むし歯が象牙質まで到達して、穴があいてしまっているむし歯です。

この大きさまで行くと、なんらかの自覚症状が出ていることが多いです。症状としては、痛みや熱いもの、冷たいものがしみるというような状態です。

処置の方法は、C1と同様にむし歯の部分を削ってレジンを詰める場合もありますが、むし歯の範囲が広い場合や、穴があいてしまっている部分の大きさによっては、金属の詰め物をしないといけないことがあります。

金属の詰め物をする場合は、むし歯を削って型取りをする日と、その型取りをして作成した金属の詰め物を装着する日の2回の通院が必要になってきます。

 

・C3(シースリー)

むし歯が歯髄(神経)まで到達してしまっている状態です。この状態までむし歯が進行していると痛みが出ます。具体的には、熱い物や冷たい物を飲んだりすると、ズキズキする痛みを伴うことがあります。

ここまで進むと、抜髄(バツズイ)という歯髄を除去する処置が必要になります。この処置は、通常のむし歯治療より時間がかかり、治療終了までにはおよそ4回以上など治療回数がかかります。状態によってかかる時間が異なります。

 

・C4(シーフォー)

むし歯が歯の根っこまで到達してしまっている状態です。歯の頭の部分がないような状態ですね。このような状態では、歯自体はボロボロに欠けていることも多く、痛みはある場合とない場合があります。状態としてはとても悪く、歯を抜くことになる場合もあります。

 

どうでしょう。C0~C2までの治療は通常のむし歯のイメージ通りではないでしょうか。

しかし、C3、C4となってくるとむし歯の状態がかなり悪くなります。むし歯が神経までいっている場合は治療も複雑になり、回数もかかります。

 

歯科検診でCと言われたら、痛みの有無に関わらずむし歯であることは変わりはありません。痛みが出ていなければ、なかなか歯医者に行く気にはならないかもしれませんが、痛くなってからだと神経を取る必要も出てきます。もしも歯科検診で「C」と言われたら、なるべく早く受診した方が良いでしょう。

 

 

【OCEAN歯科からのメッセージ】

歯科検診で「まる(処置済みの歯)」や「斜線(治療をしていない健全な歯)」ばかりであれば安心ですが、もしかしたらむし歯が見つかるかもしれません。

1番小さなむし歯であるC0でも、治療をする必要はありませんが経過観察を要するものであり、それ以上悪化しないようにしないといけません。

また、痛みなどの自覚症状がなくても、C3やC4と診断されることもあるでしょう。痛みがないからと放置してしまうと、小さなむし歯ですぐに治るものだったのに進行してしまい、最悪の場合は抜歯しなければならないなんてことにもなりかねません。

口の中は自分ではなかなか分からないものですので、歯科検診はしっかり受けるようにしましょう。また、治療が必要だと言われたら、すぐに治すようにしていきましょう。

唾液といっしょに歯周病菌を飲みこむとどうなる?

2024年8月3日

食べものはお口から胃を通り、小腸、大腸で栄養分を取り込み、排泄されます。口の中は唾液によって潤されていますので、食べものを飲み込むと胃や腸に唾液が一緒に流れていき、お口の中に生息する細菌もこれらとともに胃や腸内へと入り込みます。つまり、私たちは食べものを飲み込むときに唾液も一緒に飲み込み続けています。

この唾液の中に歯周病菌がいたらどうなるでしょうか?

最近の研究によって、口の中の環境が腸内環境にも関連があることが明らかになってきました。

今回は口の中の歯周病菌がだ液によって飲み込まれるとどうなるかを考えながら、お口の中の環境がいかに全身の健康に影響を与えるかについてご説明していきたいと思います。

 

【歯周病菌と腸内細菌の関係】

歯周病菌にはさまざまな種類がありますが、その1つにジンジバリス菌(P・g菌)というものがあります。

P・g菌…Porphyromonas gingivalis(ポルフィロモナス・ジンジバリス)

歯周ポケットの中や唾液の中にいます

口の中のどこかに歯周炎があると、P・g菌などの歯周病菌が常に存在することになります。それを食事のたびに、唾液と共に飲み込んでしまいます。

この細菌が腸に流れ込むと、腸内細菌叢(さまざまな腸内細菌で構成される腸内の環境、別名:腸内フローラ)がバランスを崩し、腸のバリア機能が低下し、血液の中には細菌が作り出す毒素量が増加することがわかっています。

腸は栄養を吸収するだけでなく、毒素も吸収してしまいます。そしてそれが血流に乗ってさまざまな臓器に少しずつ持続的な炎症を引き起こしていくのです。

歯周病菌は、飲み込んでも胃の中の胃酸で死なないのかと驚かれた人もいるかもしれませんが、残念ながら、歯周病菌は胃酸にも負けずに全身を巡ってしまいます。

このように、歯周病菌はお口の中の問題だけではなく、全身の健康に関与する可能性が高いものとして、ますます口の中の環境を清潔に保つことが注目され始めています。

 

【歯周病菌の全身への影響】

歯周病菌が食事や歯磨きのたびに歯ぐきの血管の中に入り込むと、炎症物質が血液の中に放出されます。細菌と炎症物質は血液によって全身をかけめぐり、口から遠く離れた心臓や腎臓、大腸などの重要臓器にも悪影響を及ぼします。中でも高脂血症や動脈硬化、糖尿病は歯周病菌の関与が深いといわれています。

歯周病由来の菌により、血管の中で炎症が起こると、それをきっかけとして血管の中の機能が低下してしまいます。このことによって血管に障害が起こったり、血管の壁に脂肪が沈着したり、さらに血液が固まることで血栓が作られてしまいます。これが動脈硬化や心臓発作、脳卒中のプロセスです。

このことからわかるように、歯周病は単に「歯ぐきが腫れる」「出血する」「歯が抜ける」といった、口の中の問題に留まりません。歯周病菌が原因となって引き起こされるさまざまな口の中の症状及び、歯周病が引き起こすと考えられる全身の健康状態の不具合を避けるため、歯周病の治療や予防が大切なのです。

日々、正しく口の中をケアしていくことが、腸内環境の改善につながります。

以上のことから、口腔内の環境を整え、歯周病菌が腸へ流入することを防ぐことは、腸内環境の健康維持や改善には外せない要素のひとつであることが分かります。歯周病菌は歯周ポケットに歯垢(プラーク)の中に溜まって繁殖するので、日々の正しいブラッシング(歯と歯ぐきの間を丁寧に磨く)で歯垢を溜めないことが大切です。歯周病菌を体内に入れないことにより、腸内細菌叢をきれいに保つことができ、他の臓器に炎症を引き起こすことが減少します。

このことからも、歯みがきによるご自宅でのケア、必要に応じた歯科検診でのクリーニングなど日常的な口腔内ケアが口腔内環境を整え、腸内環境をも整えることとなり、全身的な病気の予防にもつながると考えられます。

【OCEAN歯科からのメッセージ】

口と全身との関わりについては、なんとなくご存知だったかもしれませんが「むし歯で命を落とすことはない」「歯周病でも生きていくのに困らない」など、口の中の健康については軽視されがちです。全身の健康を考えるとき、口の健康とは別物と考えるのではなく、どちらの健康も繋がっているものとして考えていきましょう。全身の健康を考える上で、お口を健康に保つためにご自宅でのセルフケアと歯科医院でのプロフェッショナルケアを並行して行っていきましょう。

子どもの歯が茶色くなったワケ。その対処法とは?

2024年7月14日

子どもの歯は真っ白できれいなイメージがあるのではないでしょうか。実際に乳歯は永久歯よりも白く、乳白色できれいなことから真珠のようだと表現されることもあります。それがある日気づくと、茶色く変色していてびっくりされたことがあるかもしれません。

今回は、子どもの歯が茶色く変色する原因とそれに対する対処法について詳しくご説明していきます。

 

 

【子どもの歯が茶色くなった原因】

①着色

ウーロン茶や緑茶、紅茶などはカテキンを多く含んでいるので、これらの飲み物によって歯は着色しやすくなります。主に前歯に茶色い着色が付いてくるので、保護者の方も見つけやすく、すぐに気づかれることも多いのではないでしょうか。

着色を除去するには、歯科医院で専用のブラシとペースト(歯科医院専用の歯磨き粉)で落とすことが可能です。ご家庭でのケアで落ちない着色に気づいたら、歯科医院での専門の機械を用いたプロフェッショナルケアによって落としましょう。

着色しやすい飲み物や食べ物としては、上記以外にもココアやチョコレートのようにポリフェノールが多く含まれるものや色の濃い調味料、カレーなどが挙げられます。これらの食べ物や飲み物を全く食べないようにするのは難しいでしょうし、食事の楽しみという面からもおすすめはしません。ですから、対処法として、食べたらすぐに歯をみがいたり、水でうがいをするなどの対応を行っていきましょう。

また、歯みがきの頻度が少ないと汚れが溜まりやすく、着色のしやすいものでなくても着色してしまいます。特に乳歯の歯の溝は、大人の永久歯の歯の溝と比べると深いため、汚れが溜まりやすいのが特徴です。そのため、ざっとみがいただけだとみがき残しが多くなりがちです。奥歯の溝もしっかりみがいてあげるようにしましょう。

 

②むし歯

汚れが溜まったままの状態が長く続くと、むし歯ができてしまっている場合があります。生えてからそれほど時間が経っていない子どもの歯は、大人の歯と比べて歯質がやわらかいためむし歯になりやすいのです。ただの着色だろうと放置していたら、むし歯になっていたということにもなりかねません。

着色かむし歯か区別するには、歯科医院で専門の道具でしっかり検査をしたり、レントゲン写真を撮って判断していく必要があります。もしも気になる部分があれば、早めに歯科医院で着色かむし歯かを調べるのがいいでしょう。

特に子どものむし歯は大人のむし歯よりも進行が早く、すぐに神経にまで達してしまいます。早めの受診をすることが大切です。

 

③神経が死んでしまっている

転んで歯をぶつけたり、歯に大きな衝撃が加わることで歯の中の神経が死んでしまうことがあります。神経が死んだ歯を見ると、通常の歯の色よりも茶色から黒っぽく見えることがあります。

また、一度神経の治療をした歯も少し暗く見えることがあります。

転んで歯をぶつけたり、ボールが顔にぶつかったりしても、目に見えてすぐに変色はしません。変色するまでには1~2週間程時間がかかります。そのため、ある日気づいたらなんとなく色が変わっていたなんてことがあります。特に、転んでぶつけることが多い上の前歯によく見られます。

言葉を話せるくらいの年齢であれば転んだり、打った場合に何か訴えてくることもあるかもしれませんが、低年齢であったりすると保護者の方の目が離れたうちにぶつけていることも稀ではありません。また保育園や幼稚園などの預け先でぶつけていることもあります。

気づいたら歯の色が変わっていたというような時はご相談ください。

 

④エナメル質形成不全

この言葉は、聞き慣れない専門用語で戸惑う方もいるかもしれません。

歯は外側からエナメル質、その中に象牙質、そして神経という層状の構造になっています。エナメル質というのは、歯の一番外側にある最も硬い部分です。その部分が先天的に形成されない状態の歯を意味します。

一番外側のエナメル質は透き通った白い色をしており、ダイヤモンドの粒がついた器具でないと削れないくらいとても硬いのが特徴です。その内側にある象牙質はエナメル質よりやわらかく、茶色っぽい色をしています。歯が白く見えるのはこのエナメル質が外側にあるためです。そのエナメル質がなくなるということは象牙質が見えているような状態なので、通常の歯と比べて茶色に見えます。このため、エナメル質形成不全の歯は茶色く見えるのですね。

また、通常歯は非常に硬いエナメル質に守られているのですが、その防御層がないということは歯の強度が非常に弱いということです。これは、むし歯に非常になりやすいだけでなく、かむ力や歯みがきの力でも欠けたり、すり減ったりしやすいということを意味します。すり減ったり欠けたりしている部分は、プラスチックの詰め物などで人工的に補修してあげなければ、だんだんと神経との距離が近くなってきます。そのまま放置することで、最悪な場合は神経を取らないといけないこともあります。

もしもエナメル質形成不全ではないか?と疑わしい歯がある場合は、歯科医院での定期検診と定期管理が必要となります。もしも色がおかしいことに気づいたら、歯科医院へ早めに受診をしましょう。

【OCEAN歯科からのメッセージ】

このように、子どもの歯の色の変化はさまざまな原因が考えられます。「子どもの歯はいつか抜けるからいいや」ではなく、将来の歯並びやかみ合わせにも影響することですので、適切な処置が必要です。

もしも着色や変色に気付いた場合は、早めに歯科医院を受診し、適切な対処を行っていきましょう。

歯ごたえはどこで感じる?歯根膜の秘密

2024年7月6日

歯ごたえのある食べ物はお好きでしょうか?

歯ごたえはおいしさを感じる大切なポイントのひとつであり、お煎餅やかみごたえのある食べ物を好んで食べる方もいることでしょう。ガリガリ、ポリポリ、歯ごたえを感じる食べ物って美味しく感じますよね。この歯ごたえを感じるためには、口の中のどこの組織が深く関わっているかについて、今回はご説明していきます。

 

【歯ごたえはどこで感じている?】

歯ごたえはどこで感じでしょう?歯でかみ砕いているので、もちろん歯だろうと思われるかもしれません。しかし、実は歯ごたえを感じているのは歯ではありません。

では、どこで歯ごたえを感じているのでしょうか?

歯を支えている骨でしょうか?歯に入っている神経でしょうか?それとも歯ぐきでしょうか?
正解は「歯根膜(しこんまく)」という部位です。

「歯根膜」という言葉を初めて聞く方もいるかもしれませんが、歯の根っこと歯を支えている骨の間にある薄い膜のことをいいます。簡単に言うと、歯の根っこを覆っている膜のことです。

厚みは0.2~0.3㎜ほどしかありませんが、歯にとって重要な役割をしています。

【歯根膜の役割】

①歯と歯槽骨をつなげる

歯根膜はただの膜ではありません。膜といってもとても細い糸でできていて、糸の両端は歯と歯槽骨を繋げている歯根膜の細かい糸をシャーピー繊維と言います。歯の根っこが歯槽骨の骨のくぼみからすっぽりと抜けないのはこの繊維のおかげなのです。つまり、歯根膜には歯の根っこと歯を支えている骨(歯槽骨)をしっかりと結び付けるという役割があります。

 

②歯の衝撃を和らげるクッション
何かをかむ時や食いしばる時には、歯は大きな力を受けています。このような力を受ける時でも

脳にはガンガン響いてはいませんよね。歯根膜は、歯が受ける衝撃が歯の根っこが埋まっている骨(歯槽骨)や脳に直接力を響かせず、歯の根っこと歯槽骨の間で歯を包みこむことで衝撃を和らげてくれているのです。かみ続けることによる歯の擦り減りや傷つきからも守ってくれる役目を果たしています。硬いものをガリッとかんでしまっても、歯や周りの骨に大きな問題がないのは、歯根膜があるからなのですね。

 

③食感のセンサー

歯根膜はセンサーのような役割も担っています。かんだ時に感じる「硬さ」や「感触」といった
微妙な感覚を歯根膜は脳に伝えています。何かを食べるときにどういう感覚なのか、その食べ物が硬いのかやわらかいのかという情報も、歯根膜が刺激を感知して脳に伝えてくれます。おせんべいを食べる時に硬いなと感じたり、キュウリなどのポリポリした感覚、天ぷらのサクッとした食感を楽しめるのも歯根膜があるおかげなのです。

このように歯根膜があることで、かんだ刺激を感じることができ、どれくらいの力でかむのか、食べ物をかみ砕く時の力加減なども調節ができます。

 

【失ったら2度と戻らない歯根膜】

歯が抜けてしまうと、歯根膜も一緒に歯にくっついて一緒にとれてしまいます。ということは、一度歯根膜を失ってしまうと、食べ物を食べたときの食感も一緒に失われてしまうということなのです。入れ歯やインプラント治療によって抜けた部分の歯を補ったとしても、歯根膜が元に戻ることはありませんので、元の感覚は戻りません。

また、歯周病が進行することで歯が埋まっている歯槽骨が破壊されると、歯根と歯槽骨の間にある歯根膜も失われてしまいます。そうすると、歯根膜による結びつきがなくなることでだんだん歯がぐらついてきて、そのまま放置していると歯を失ってしまうことに繋がりかねません。歯根膜を失わないためにも、毎日のご自宅でのケアをしっかりと行って歯を守る必要があります。

【歯根膜に炎症が起きることもある】

歯ぎしりや食いしばりなどが原因となり、歯根膜に炎症が起きることがあります。これを「歯根膜炎」と言いますが、歯根膜に起きる炎症の総称です。原因はさまざまなものがありますが、歯に過度な力が断続的にかかってしまうことで歯根膜炎となり、痛みが出ることがあります。

歯根膜は歯ぐきの下にあり、歯と歯槽骨の間にあるものなので目で確認することはできません。しかし、なんだか歯に違和感があると感じたり、痛みがあるという場合は歯根膜炎の可能性もあります。そのうちに治るだろうと放っておくのではなく、歯科医院へご相談ください。

 

【OCEAN歯科からのメッセージ】

歯根膜の大事な役割についてご理解いただけたでしょうか。歯は見える部分だけでなく、縁の下の力持ちのような役目をしてくれる「歯根膜」があるからこそ私たちはいろんな感触で食べ物を食べることができます。歯周病が進行すると歯を支える歯槽骨がなくなります。それに応じて歯根膜も失われていきます。歯根膜がない歯の感覚は鈍くなり、歯と歯槽骨をつないでいることから構造的にも支えが少なくなって弱くなってしまいます。歯周病になって歯根膜がなくならないように定期的に歯科医院で専門的なクリーニングを受けてきれいなお口を維持していくことが重要です。

インプラント治療ができる年齢や条件

2024年6月19日

むし歯や歯周病、生まれつき永久歯がなかったり、外傷や事故などのさまざまな原因で歯の数が足りない場合、何らかの処置をする必要があります。その中の一つの選択肢としてインプラント治療がありますが、実際に何歳から何歳までがインプラント治療をすることが可能なのかご存知でしょうか?

今回はインプラント治療が可能となる適応年齢、必要とされる条件、またインプラント治療などをしないで歯を失ったままで放置すると起こること、他の治療との違いなどについてご説明していきたいと思います。

 

【歯を失ったまま放置するとどうなるのか?】

もしも歯を失ってしまったスペースをそのままにしておくと、隣の歯がそのスペースに向かって倒れてきて、最悪の場合、うまくかめないような状態になってしまいます。また、かみ合う相手を失った歯というのは、徐々に伸びてきてしまい1本だけ歯が長くなります。1本だけ長い歯はかみ合わせに大きな影響を及ぼします。この状態を長期間放置してしまうと、かみ合わせ全体のバランスが崩れて、他の歯も長持ちしなくなり、歯をさらに失ってしまうことに繋がります。このような状態を防ぐために入れ歯やブリッジ、もしくはインプラントなどの治療をしていきます。これらの処置によって歯を人工的に作ることで、失われた歯のスペースを確保して元のかみ合わせを維持しておくことが可能になります。

 

【インプラント治療と入れ歯やブリッジとの違い】

インプラント治療が入れ歯やブリッジなどの治療と大きく異なるところは、周りの歯を削ったり、負荷をかける必要がないことです。入れ歯を入れる際には、歯がない部分の両隣の歯に金属の装置をかけます。その金属によって失われた部分にかかる力を支えてもらう必要があるため、両隣の歯に負荷がかかるのです。また、ブリッジによる治療を行う際は、失われた歯の両隣の歯を一部削る必要があります。

一方で、インプラント治療は、歯がないところの骨に人工の歯根を埋め込んでいきます。両隣の歯には全く影響を及ぼさないのが入れ歯やブリッジとの大きな違いです。

 

 

【インプラント治療には年齢制限はあるの?】

インプラント治療ですが、何歳でもできるものではありません。基本的には、インプラント治療は成長が止まってから行います。一般的には20歳以降が良いとされていますが、成長のスピードや成長が止まる時期というのは個人差があるため、それぞれ患者様の状態に合わせて判断していきます。

では、なぜ成長が止まらないとできないのでしょうか。

インプラントは骨に埋め込むので、若いうちにやっていた方が骨もやわらないし、傷の治りも早いからいいのではないか?と疑問を持たれるかもしれません。しかしながら、インプラント治療は成長が止まった後に行うのがいいとされています。

 

【成長が終了する前にインプラント治療をしたらどうなる?】

もしも成長が終わらないうちにインプラントを骨に埋め込んでしまうとどうなるのでしょう。

成長とともに顎の骨というのはどんどん大きくなっていきますよね。そうすると、インプラントを埋め込んでも、成長とともに位置がズレてしまうことになります。最初に埋め込んだ位置と変わってしまうことになるのです。

顎の成長によってインプラントの位置が移動することで、他の歯にあたってしまうこともあります。他の歯にあたって強い力がかかると、その歯がグラグラしたり痛みが出たりすることがあります。インプラント治療をした結果、健康な歯にまで悪影響を及ぼす恐れがあるのです。

つまり、成長が終わらないうちにインプラント治療を行ってしまうと、インプラントを入れたのはいいけれど、結果的にかみ合わせと歯並びが悪くなってしまうことになり得るのです。このようなことから、インプラント治療は成長が止まったことを確認してから行う必要があるのです。

 

【成長期のお子さんが歯を失ってしまったら?】

それでは、成長が終わっていないお子さんが外傷や何らかの理由によって歯を失ってしまった場合はどうするかをご説明していきます。

上に述べた理由から、成長段階のお子さんはインプラント治療をすることができません。そのため、失った歯の部分は、まずは入れ歯や仮歯によって空いたスペースと上下のかみ合わせを維持していきます。そして成長が終了したことを確認してから、ご希望があればインプラント治療を行います。

 

【インプラント治療は何歳までできる?】

インプラント治療は、何歳までなら可能という明確な指標というものは存在しません。というのも、インプラント治療をする上では年齢だけでは判断できないさまざまな要因があります。それらの要因を総合的に判断して治療が可能かを決定していきます。

 

【インプラント治療が可能かどうかを決定する要因】

以下のものはインプラント治療をする上で、確認しなければならない事項です。

 

①全身疾患があるかどうか

年齢を重ねるにつれ、全身疾患をお持ちの方も増えていきます。糖尿病や高血圧、心臓病をはじめとした持病の状態を把握してから、インプラントの手術が可能かを判断していきます。病気の種類やコントロール状態によっては手術ができなかったり、インプラントがうまく定着できないこともあります。状態が詳しく分からないときは、かかりつけの病院の先生にご相談してからインプラント治療が可能かを判断していきます。

 

②顎の骨の状態

歯を支えている骨を歯槽骨といいますが、歯槽骨は成長が終了してから同じ状態を維持するわけではありません。加齢とともに薄くなったり高さがなくなってしまっていることがあります。もしも歯槽骨の厚さや高さが不足していてインプラントを埋め込むのに十部ではないと判断した場合、骨を増やす治療を追加で行う必要があります。治療後、骨の状態が安定してからインプラントの手術を行なっていきます。

 

③耐えられる体力があるかどうか

インプラント治療は、インプラントを埋め込む手術です。手術ですから、身体にそれなりの負荷はかかります。日々の生活を送るのに支障がないような健全な状態であれば問題はありませんが、インプラント手術と術後の状態に耐えられるだけの体力がなければなりません。

 

④インプラント手術後のメンテナンスが可能か?

インプラントの手術が終わっても、長持ちさせるためにはその後のメンテナンスが重要です。インプラントは人工物ですが、自分の歯と同様にケアをしないと良い状態は保てません。定期検診で歯科医院に通ってメンテナンスするだけでなく、ご自宅での日々のセルフケアが必須です。

自分の歯に比べて、インプラントは感染に対する抵抗力が弱いため、より丁寧なブラッシングが求められます。そのため、認知機能に問題がないことやセルフケアがご自分でできる方が良いでしょう。

 

⑤妊娠をしていないか?

インプラント手術をする前には様々な検査が必要です。その中には、レントゲン写真やCT撮影があります。妊娠している場合、お腹の赤ちゃんのことを考えると放射線被曝の影響を考慮しなければなりません。歯科で用いるX線撮影は医科のものに比べると、被爆量が少なく胎児への影響は少ないと言えますが、可能な限り被曝量を減らすほうが良いでしょう。

また、インプラント手術時には麻酔薬は必ず使用しますし、術後には痛み止めや抗生剤も服用していただきます。これらのものは、妊娠中には使用できないものがあります。また、悪阻や体調面の安定のことも考えると、インプラント治療を希望していても、妊娠中ではなく出産後、身体の状態も落ち着いてから行うのが望ましいと言えます。

もしも、何かしらの原因で妊娠中に歯がな苦なってしまった場合は、仮歯を入れたりすることでスペース確保し、見た目にも影響が出ないようにしていきます。

 

⑥矯正をする予定がないのか?

矯正によって歯を動かしたいとき、一度埋め込んでしまったインプラントを動かすことはできません。そのため、もしも矯正治療とインプラント治療の両方をご希望の方は、先に矯正治療を終わらせてからインプラントの治療を行うのがいいでしょう。

矯正治療をご希望の方は、そのことをスタッフまでお声がけください。

【OCEAN歯科からのメッセージ】

様々な状態を総合的に考えて、インプラント治療が可能かどうかを判断していかなければなりません。また、入れ歯やブリッジといった他の選択肢と比べて、インプラント治療が患者様にとってベストな選択肢かどうかを十分に話し合って決めていくことが大切です。

もしインプラントに興味がある方はお気軽にご相談ください。

舌がピリピリする!?舌痛症ってどんな病気?

2024年6月2日

舌を間違えて噛んでしまったわけでも、火傷をしたわけでもないのに舌がピリピリ・ヒリヒリと痛むことはないでしょうか?舌に明らかな異常が見られないのにピリピリとして痛い場合、もしかしたら舌痛症(ぜっつうしょう)という病気かもしれません。

舌痛症は、40代以降の女性が発症しやすい病気です。しかしながら、この症状が誰にでも起こり得ます。

今回は舌痛症の原因や症状、対処法などを詳しくご説明していきます。

 

【舌痛症ってどんな病気?】

舌痛症は、名前の通り、舌に痛みを感じる病気でピリピリ・ヒリヒリ・ザラザラなど、感じ方は個人によって異なります。寝ている間や会話中、食事中に痛みが軽減するなど、一般的な病気とは異なる症状が見られることがあります。

 

【舌痛症の特徴は?】

・中高年の女性に多い

・原因不明の舌のヒリヒリ感が続いている

・舌が何かに触らなくてもヒリヒリして感じる(自発痛)

・誤って舌を噛んだ傷や口内炎のほかに、きっかけが見当たらないケースも多い

・痛みは多くの場合起きている間にあり、寝ている間はない

・食事中には悪化せず、痛みを感じないこともある

・何か他のことに集中しているときは痛みが減って、1人で考えごとをしているときなどに痛みが増す

・朝よりも夕方から夜にかけて痛みが増すことが多い

・痛みの程度や痛む場所が、時間帯や日によって場所が変動する

・ロキソニンやボルタレンなどの痛み止めの薬が効かない

 

【舌痛症の原因は?】

現在のところ、舌痛症の明確な原因は解明されていません。

原因は十分にわかっていませんが、ひとつの説として言われているのが脳の神経ネットワークの複雑なシステムです。脳が心の痛み(ストレス)をキャッチし「からだが痛い!」とシグナルを出してしまうことが一因ではないかと考えられています。

 

【舌が痛いと全て舌痛症なの?】

舌が痛いからといって、全てが舌痛症ではありません。

以下に挙げる病気・異常との鑑別が必要となります。

下に示してある病気などでも舌がピリピリとする症状を伴うことがあります。これらはそれぞれの起こる原因が解明されていて、治療法も確立されています。そのため、舌が痛い場合は以下の病気や異常のいずれにも当てはまらないケースを舌痛症と診断する場合が多いのです。

・アフタ性口内炎

・難治性の潰瘍(かいよう)

・口腔カンジダ症

・口腔乾燥症

・平滑舌(へいかつぜつ)

・扁平苔癬(へんぺいたいせん)

・三叉神経痛(さんさしんけいつう)

・舌咽神経痛(ぜついんしんけいつう)

 

【どうやって舌痛症を治療するの?】

舌痛症は根本的な原因が不明なため、治療法としては基本的に対症療法がメインとなります。

つまり、病気が発症する原因にアプローチするのではなく、症状を軽減させる治療法になります。まずは口腔内の検査を行い、舌に異常がないかを確認します。もしも、歯や口腔に問題が見られない場合、内科的な診察が必要となります。ストレスやホルモン異常、亜鉛の不足や栄養の不足によっても舌に痛みが生じることがあるため、それぞれについて細かく調べる必要があります。

もしも舌痛症ではなく、しっかりと舌の痛みの原因が分かった場合は、それに対する治療をしていきます。亜鉛の不足が考えられる場合は、サプリメントなどでの栄養補給が検討されます。亜鉛の不足というのは、味覚異常を引き起こす原因となるのです。また、唾液の分泌が不足していて口腔の乾燥が見られる場合は、唾液の分泌を促進するための対策が行われます。これには唾液腺マッサージや水分補給が含まれます。

 

【舌痛症かな?と思ったら】

舌が痛くて、もしかしたら舌痛症かもしれないと思った時はまず、自分で症状をよく観察してみることから始めましょう。

①まず、どんなときに痛みが減るのか?を観察する
舌痛症の痛みというのは、日によって、時間帯によって増減します。ご自分で、どんなときに痛みが増して、何をしていると痛みが減るかに気をつけてみましょう。

痛みを客観的にとらえることが、ご自分のつらさを客観視することにつながります。そんなことと思うかもしれませんが、これが痛みから距離を置くきっかけになって、改善へ踏み出す第一歩になる可能性があります。

 

②日中の食いしばりに気づいたら、やめる
食いしばると舌が緊張し、歯に強く押しつけられます。そうすると、痛みが増しやすい状態になります。仕事中や車を運転している時、家事をしている時などに食いしばりをしていないか気をつけて、もしもしていたら意識的に歯を離すことを心がけましょう。

 

③痛みを抑える薬を服用する
舌痛症の患者さんにみられるのが、痛みを抑制する脳内ホルモンの働きの低下です。これを改善させて痛みを抑制するに効くのが抗うつ薬や抗てんかん薬です。

しかしながら、このような薬の舌痛症治療への使用は適応外処方になるため、通常の歯科医院では処方できません。専門的な病院にて診療を受けて処方してもらう必要があります。

舌痛症の治療は患者さんによって効果が異なる場合があります。そのため、主治医との密な相談や調整が重要です。舌の異常を感じた場合は、専門の病院にて適切な診断と治療を受けることが大切です。

 

④薬を飲み、専門的なカウンセリングを受ける
抗うつ薬や抗てんかん薬の服薬は、舌痛症の痛みの抑制に効果的です。しかしながら、薬を飲むことをやめて、痛みが元どおりになってしまうのでは困ります。そこで、薬を飲むだけでなく、専門的なカウンセリングで指摘されたことを改善していくことも重要です。

例えば、食事では刺激物を避けることも重要になるかもしれません。また、寝る時間を十分に確保することも大事です。痛みの変化をご自分でしっかりと観察して、痛みが和らぐ時間帯を少しずつ増やしていくのもいいでしょう。

 

 

【OCEAN歯科からのメッセージ】

舌痛症は痛みを伴うだけでなく、患者さんの日常生活にも影響を与えることがあります。痛みや不快感が持続することで、食事や会話が困難になり、それがストレスを引き起こすことがあります。もしも舌の痛みが気になっていたり、ヒリヒリするなと感じる場合は専門の病院での正確な診断と適切なケアが必要です。もしも舌の痛みに悩んでいる方は、早めに歯科医院にてご相談ください。適切な機関へご紹介していきます。

 

麻酔薬の効きやすさ

2024年5月25日

歯科医院で処置をする際に必要となってくる麻酔薬。治療時の痛みを堪えて治療するのは大変ですので、痛みを伴う治療の場合は必ず行います。麻酔はいつ行っても効果は同じだろうと思われるかもしれませんが、その効きやすさには同じ人であっても状態に応じて異なります。

今回は麻酔の効きやすさの違いについてご説明していきます。

 

【麻酔薬はどのように効くのか?】

歯科治療をするためには、麻酔薬を効かせて痛みがない状態で処置を行う必要があります。痛みのある状態で治療していくのはかなりのストレスであるため、そのままの状態では治療をすることができません。そのため、治療をする際には麻酔を十分に効かせていく必要があります。

では、麻酔薬というのはどのように効いていくのでしょうか。

実は、麻酔薬というのは、歯に痛みを伝える神経を直接狙って麻酔の注射をしているわけではないのです。麻酔を効かせるためには、まずは麻酔薬を歯ぐきに注射していきます。注入された麻酔薬は、歯ぐきから歯槽骨と呼ばれる顎の骨の中に浸透していきます。歯は顎の骨の中に埋まっていますから、浸透してきた麻酔薬が歯の根っこに到達して、そこでようやく歯の神経に麻酔が効き始めます。このように、麻酔を打った部位と実際に効果が現れる部位が同じではなく離れています。そのため、麻酔の注射をしても、もしも麻酔薬を注射した部位から歯に痛みを伝える神経までのルートで何かしらの障害がある場合は麻酔が効きにくくなってしまうのです。

では、どんな場合に麻酔が効きにくいのでしょうか。次に、麻酔薬が効きにくくなる障害についてご説明していきましょう。

 

【どんな時に麻酔薬が効きにくいのか?】

麻酔を使うタイミングというのは、2種類あります。

ひとつは痛みなどの症状が強くて、麻酔をしないと治療ができない場合です。

もうひとつは、抜歯やむし歯の治療のように、処置の前は症状がなかったり強くなくても、処置をする際に痛みが強く出ることが予想される場合です。

痛みがある場合というのは、強い炎症を伴っている状態です。そのようなとき、組織は酸性に傾いています。麻酔薬はアルカリ性ですので、炎症を起こしている酸性の組織に麻酔薬を作用させてもそれが中和されてしまいます。その結果、麻酔の効果が薄れてしまうのです。

つまり、炎症が強いほど組織は酸性に傾いていて、麻酔薬の効き目が出にくくなってしまいます。

「違和感を放置していて、だんだんと痛くなった。もう我慢ができないからどうにかしてほしい。」と来院される方がいらっしゃいます。しかし、そのような場合は炎症が強いことが多く、最も麻酔が効きにくい状況です。そのため、その日に処置をせず、消炎鎮痛薬などを処方して炎症がある程度治ってから処置を行います。

 

【骨の質によっても麻酔の効果が違う】

麻酔薬の効きやすさは、炎症以外にもさまざまな条件によって異なります。実際には、骨が薄い人と厚みがある人では効き方に差があります。また、骨密度が高かったりするのも麻酔薬が浸透しにくい一つの原因です。

骨の中というのは2層の構造になっていて、表面は緻密で硬い皮質骨、中の方は疎な海綿骨でできています。硬い皮質骨に対しては麻酔薬は浸透しにくいため、この皮質骨が厚い場合は麻酔が効きにくいかもしれません。上顎に比べて下顎は骨が厚いため、下の歯の方が麻酔薬がなかなか効きにくい傾向にあります。特に下顎の奥歯などは、とても分厚い骨に覆われているため麻酔が効きにくいのです。

歯の神経は顎の骨の中を通り、歯の根っこの先から入り込んでいますので、骨の外から麻酔を効かせようと思うと骨が厚いほど緻密であるほど麻酔が効きにくいということです。

親知らずは口腔内でも、1番硬く分厚い骨に覆われています。そのため「下顎の親知らずを抜歯するときに麻酔が効きにくかった」というのは1番麻酔の効きにくい場所であるためであり、比較的起こりうることなのです。ですので、親知らずに違和感があったり、いずれ抜こうと思っている方は、できるだけ炎症や痛みが強くなる前に処置を受けることをおすすめします。

 

 

【飲酒の習慣や内服薬がある場合】

普段からお酒を飲む量が多かったり、抗うつ薬や鎮痛剤を常用している場合なども、麻酔が効きにくくなります。麻酔薬などの化学物質は、肝臓で分泌される酵素の働きにより分解されます。お酒に含まれるアルコールや注射、内服薬に含まれる成分も、肝臓で分解されている化学物質です。そのため、普段からお酒を飲む量が多かったり、抗うつ薬や向精神薬、鎮痛剤を長期間服用している方は化学物質を分解する酵素が増えて、分解速度が速くなります。

歯科治療時に注射した麻酔薬も体内で速く分解されるため、通常よりも効きにくくなってしまいます。このように、薬によっても麻酔薬の効果に変化が出ることもありますので、抗うつ薬や鎮痛剤に限らず、常用している内服薬がある場合は、お薬手帳を常備して受診されるのが望ましいでしょう。

また、以前麻酔が効きにくかった経過がある人、麻酔でアレルギー反応が出た経験がある人は、治療前に歯科医師にご相談ください。

 

【その他の理由】

麻酔薬の種類と患者さんの体質などの相性も少なからずあります。麻酔薬の種類によって効きやすかったり、効きにくかったりする場合もあります。

また、歯科医院での治療に不安があり、緊張している場合は麻酔が効きにくいことがあります。

以前、治療で痛い経験をしたりトラウマがあるような方は、治療に対して不安が強くなると、それほど強く感じない痛みに対しても敏感に感じてしまうことがあります。

意識するほど痛みに敏感になるため、麻酔前に深呼吸したり、できるだけリラックスするようにしましょう。このような場合は歯科医院のスタッフに、治療に対する不安やトラウマを予め話しておきましょう。可能な範囲で緊張を和らげたり、配慮をすることもできます。

その他の麻酔が効きにくくなる理由として、体調不良や睡眠不足などが挙げられます。このようなときは、麻酔が効きにくかったり、普段感じないような違和感を感じることがあります。無理して麻酔を受け処置をすることによって、普段は起こり得ないような思いがけない症状が出ることもあるかもしれません。

麻酔が効きにくくなり麻酔量が増えたり、麻酔後に気分が悪くなることもあるので注意しましょう。体調が悪い場合は無理せず、体調を整えてから後日、治療を受けることをおすすめします。

 

 

【OCEAN歯科からのメッセージ】

このように、麻酔薬というのはいつでも誰にでも同じように作用するものではありません。その方の体質や炎症の状態、体調によっても作用の効果が異なるのです。

歯科の麻酔は全身に効くのではなく局所に効くものです。しかしながら、麻酔の効果にはさまざまなことが影響してきますので、十分に配慮していく必要があります。

もしも何か気になることがあれば、処置の前に必ずご相談ください。

初診「個別」相談へのご案内

当院では、患者さんが抱えていらっしゃるお口のお悩みや疑問・不安などにお応えする機会を設けております。どんなことでも構いませんので、私たちにお話ししていただけたらと思います。
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