どういうときに歯の神経をとらないといけないの?
2024年11月16日
歯科医院で「虫歯が大きくなってしまっているので神経をとらないといけないかもしれません」と言われたことがある方もいるのはないでしょうか。
歯には神経があることは知っているかもしれませんが、それがどこのことなのか、どういう役割を果たしているかについて詳しく分からない方も多いかもしれません。
今回は歯の神経について、どうしてとらないといけないのか、炎症の状態も含めてご説明していきます。
【歯の神経をとらないといけないとき】
歯の神経に細菌が感染してしまったり、歯の神経が生活力を失ってしまて、そのまま放っておくことで歯の根っこの先に炎症を波及させてしまう恐れがあると判断されたときには、歯の神経をとらないといけません。
では、そもそも歯の神経とはなんでしょう。
正式には歯髄と呼ばれる組織のことです。
歯は外側から何層にも異なる組織が重なるようにしてできているのですが、その1番内部にある空間を満たしている部分のことです。「歯の神経」とは一般には言われていますが、実は血管も含まれている組織であって、その血管を通して歯の水分や栄養の補給などもしています。
では、実際にこの神経にはどのような役割があるのでしょうか。
神経というとおり、痛みなどを感じる神経組織が存在しています。この神経があることで、外部からの刺激に対して防御反応などを示すことが可能になります。歯の神経はとても重要な組織であって、いくら神経の治療をして代わりの薬を入れたとしても、残念ながら本来の歯の神経に代わるほど良いものではありません。
このように歯にとってとても重要な働きをする神経をとらないといけないときというのは、どういうときなのでしょうか。
一般的には、以下のような場合は神経をとらなくてはならないことがあります。
①むし歯や外傷などで歯の神経に細菌が感染した
この場合、軽度であれば神経をとらなくて済む場合もあります。
しかしながら、感染の程度がひどく、後戻りのできないほどの炎症があったりズキズキと痛みが持続する場合などには神経をとらないといけないことが多くあります。
②むし歯や外傷などで歯がかけた状態やぶつけたままで放置していた
むし歯や外傷などで歯に何らかの問題が生じた場合、大丈夫だろうと自己判断で放置してしまうと「いつの間にか痛みや症状がなくなった」と思いきや、実は歯の神経が腐敗してしまっているケースも少なくありません。
実は気づいていないだけで歯の中では炎症反応が起こっていることもあります。
自己判断せずに、思い当たる節があればすぐに歯科医院での確認が必要です。
③炎症などの症状がないけれど、便宜的に神経を取る必要がある
かぶせものなどを作る場合には、炎症や症状がないけれど、便宜的に神経をとる必要があることもあります。頻繁にあるわけではありませんが、そのような場合は詳しくどういう理由で神経を取る必要があるのか、治療計画も含めてご説明してから神経をとっていきます。
【炎症ってどんな状態?】
上記の神経をとらないといけない場合の③以外は、炎症があるときです。
からだは何らかの害となる刺激を受けた時に、免疫応答が働きます。その免疫反応によって体に出現した症状のことが炎症です。
風邪などを引いたときに炎症症状として喉が腫れたりするのをイメージするといいかもしれません。
炎症を詳しくご説明すると、以下の5つの兆候を総じて炎症といわれてます。
1.発赤(赤くなる)
2.腫脹(腫れる)
3.発熱(熱がでる)
4.痛み(言葉が示す通り、痛み)
5.機能障害(動かなくなる、機能しなくなる)
例えば、転んで膝などを打った場合を考えてみましょう。打ったところに傷ができ、その傷の周りは赤く腫れます。痛みも伴うことでしょう。そして、いつもより動かしにくくなることも考えられます。このように、私たちのからだの表面に現れる炎症はイメージが簡単にできるのではないでしょうか。
この転んだ傷などによる炎症は、原因となる刺激が除去されれば自然治癒を期待できます。
しかし、歯の場合は話は別なのです。
【歯の神経に炎症が起きたら】
歯は、根っこの先にある非常に細い穴と歯の内部が交通しています。もしも、歯の内部に炎症が波及すると、血管自体がダメージを受けてしまうため、修復が不可能な状態になります。
つまり、炎症を起こした神経(歯髄)そのものが炎症の原因となるため、歯の神経をとる必要が出てくるのです。歯の内部で炎症を起こした場合、歯の内部の血流も失われます。そのため、化膿止め(抗生剤)を飲んだとしても、膝の傷のようには歯の炎症は治まりません。
ただ、歯髄充血といわれる後戻りできる程度の炎症であれば、条件を揃えて炎症を起こしている原因を除去することで炎症は治まる場合もあります。
では、神経をとる場合ととらなくても大丈夫な場合、つまり、後戻りできない程度の炎症と後戻りできる程度の炎症をどのように見極ていくのかをご説明していきます。
1番簡単なのは、炎症の程度が分かるように歯の中の血流量などを目で見たり、正確に測ることでしょう。しかし、残念ながら歯の場合はそうやって目で見て確認したり、測ることはできません。歯の神経は何層もの硬い組織に覆われているので、この炎症の度合いが大変分かりにくいのです。最新の器具を用いても、この炎症の程度を治療前に完璧には調べることは難しいとされています。
ただ、実際に測定はできなくても、さまざまな情報から総合的に診断して、処置をしていくことはできます。そのためには事前に十分な問診を行って、その症状がいつからどのようになっているかを知ることが必要です。できるだけ的確な診断を行うために、必要とされる診査を行います。
【OCEAN歯科からのメッセージ】
歯の内部というものは、皆さんがイメージしているよりも非常に複雑な構造になっています。
特に神経は複雑であり、歯の神経を残すにしても取り除くとしても治療の成功率は100%でありません。また、歯の神経を取ったつもりでも取りきれない神経も存在することがわかっています。そのため、非常に専門性の高い治療の一つであるともいうことができます。
歯の寿命を長持ちさせるためにも神経があるというのはとても重要なことですので、こまめにメンテナンスを受けて口の中の環境を整え、神経をとらなくていいようにしていきましょう。
「よくかめる」にはワケがある
2024年11月8日
みなさん、普段の食事でよくかめているでしょうか?
「なんとなくかみにくい」という方や「かみ合わせが悪くてしっかりかめていない気がする」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
よくかめるには、かみ合わせが大きく関係してきます。今回はよい歯並びとかみ合わせについてご説明していきます。
【よい歯並びとかみ合わせ】
歯並びがよく、かみ合わせもよければ食事の際に効率よくかむことができるというのは、ほとんどの方がイメージできるのではないでしょうか。
では、一体どのような歯並び・咬み合わせであれば、食べものをしっかりかむことができるのでしょうか?
その特徴をまずはご説明していきます。
特徴としては、次の5つです。
①おおらかなU字型の歯並び
日本人はアジア人の中でも歯が比較的大きいのです。その大きな歯に適した歯列がU字型なのです。
上顎や下顎を口の中から見たときにV字のように尖っているのではなく、きれいなU字を描いているのがよい歯列です。U字の場合は、前歯や奥歯が飛び出したり倒れこみなどはありません。
②上下の歯並びの真ん中が一致している
鏡を見ると上下それぞれの前歯の真ん中が分かるでしょうか。その真ん中が上下でほぼ一直線になっていることと、その歯の真ん中と顔の真ん中が一致していることが大切です。
③前歯でうどんやそうめん、サンドイッチが無理なくかみ切れる
前歯の噛み合わせが良くないと、うどんやそうめんなどの麺類、サンドイッチなどがうまくかみ切れません。ものをかみ切るのは前歯の役割です。その役割をきちんと果たすには、歯を普通にかみ合わせたときに、上の前歯が下の前歯に、水平・垂直方向で約2ミリずつかぶさっているのが理想的です。
これが前歯を普通にかみ合わせても空間が空いていたり、逆に下の前歯が全然見えないくらい上の前歯が被っていたりすると良いかみ合わせとは言えません。
④上の1本の歯が下の2本の歯の間にかみ込む
歯並びを横から見てみると、理想的な歯並びというのは左右両側の犬歯から奥の臼歯までの歯が、上あごの歯1本に対して、下あごの歯2本の割合でバランスよくかみ合っている状態になっています。これは「一歯対二歯(いっし・たい・にし)の咬み合わせ」といいます。
上の1本の歯が下の2本の歯の間にかみ込む(下の1本の歯が上の2本の歯の間にかみ込む)という状態です。上下左右の奥歯が隙間なくしっかり咬み合っていることもポイントです。
奥歯のかみあわせは鏡などで見てもご自分ではよく分からないこともあるでしょう。ご家族同士で相互に見てみると分かりやすいかもしれません。
⑤厚みのある肉も左右の奥歯でしっかりとかめる
奥歯には、食べ物をすりつぶすという役割があります。左右の奥歯でものがかめると、厚みのある肉もしっかりかんですり潰すことが可能になります。左右どちらでも変わりなくかめることも重要です。左右のどちらか片方でだけかんでいる場合、かむことによる自浄作用がなくなりますので、むし歯や歯周病のリスクが高くなります。
【よくない歯並びはどんな感じ?】
上記の5つの特徴を持った歯並びは理想的なかみ合わせと言えます。
では、次によくない歯並びについても知っておきましょう。専門的にいうと、よくない歯並びは「不正咬合(ふせいこうごう)」といいます。
不正咬合になる原因としては、顎や歯の大きさといった遺伝的なものと、悪い習慣などによって後天的になってしまったものとに分けられます。
よくない状態をそのままにしておくと、何が問題かというとまずはうまくかめないなどと機能面での問題が起こりやすいのはもちろんですが、歯並びが悪いということでうまく笑えなかったり、笑顔に自信がもてなかったりする方もいらっしゃるかもしれません。歯並びコンプレックスがあると、うまく笑えなかったり、話すときに気になってしまうことから人間関係なども消極的になりがちです。また、話すときの発音が聞き取りにくかったり、不明瞭になりやすい可能性もあります。また、歯をしっかり食いしばることができないために、自分が持っている力を発揮できず、運動能力の低下にもつながるとされています。
なお、不正咬合の状態や程度は人それぞれです。少しのガタつきから出っ歯だったり、歯がデコボコしているなど、複数の問題を抱えていることも少なくありません。
以下に、その代表的な不正咬合をご紹介していきます。
①前後的な問題
・でこぼこ(叢生)
みなさんのイメージ通り、歯がでこぼこに生えたりしてガタついている状態です。
歯の大きさに対して並ぶ隙間が足りない場合、歯はでこぼこ(捻れるか、重なる)、あるいは前に突出する形となります。特に前歯のでこぼこは、一般的にも気がつきやすい歯並びではないでしょうか。八重歯もその一種であり、犬歯が飛び出したような状態です。
・受け口(下顎前突)
通常のかみ合わせは、奥歯でしっかりとかみ合わせた時に、上の前歯が下の前歯を覆っているようになっています。もしも、下の前歯が上の前歯より、連続して3本以上前側にある咬み合わせであれば受け口になっているといえます。下の歯は、上の歯のかぶさりがないため先端から根もとまですべて見えている状態です。
・出っ歯(上顎前突)
上の前歯が出ているかみ合わせです。上の前歯や上顎そのものが前方に出ていたり、下顎が後退している状態など原因は様々です。顎の骨に問題がある場合と、歯だけが前に出ている場合とがあります。
②左右的な問題
・交叉咬合
通常、上の歯は下の歯を覆っています。それが逆になっている咬み合わせのことです。
奥歯に交叉咬合があると、歯の真ん中も一緒にずれていることがあります。
・すきっ歯(空隙歯列)
歯と歯の間がつまっておらず、隙間があるような状態です。原因としては、歯そのものが小さい場合もありますし、歯と顎の大きさのバランスが合っておらず、歯に対して顎が大きいことなどによっても起こります。
他にも、歯が顎の骨の中に埋まって出てこない「埋伏歯(まいふくし)」や、もともと歯の本数が足りない「先天性欠如歯」があることが原因で起こる場合もあります。
③上下的な問題
・過蓋咬合(かがいこうごう)
上の前歯が下の前歯に深くかぶさっている咬み合わせのことです。
下の前歯が上の前歯に隠れてしまって少ししか見えていない場合や、全然見えていないこともあります。
・開咬(かいこう)
奥歯をしっかり咬み合わせても、上下の前歯が咬み合っておらず、隙間ができてしまう状態のことです。開咬であると、前歯で食べ物をかみ切ることができません。見た目にもすぐに気づいたり、食事の面でも支障があるためすぐに気づく方も多いかみ合わせのひとつです。
かみ合う歯が少ないため、顎関節症が発生しやすくなります。
【OCEAN歯科からのメッセージ】
以上にご説明したように、歯並びとかみ合わせについてはよいものと悪いものが明確に分かれています。よい歯並び、かみ合わせであれば効率的に食べ物を咀嚼することができますし、むし歯や歯周病、顎関節への負担も軽減します。しかし、悪い歯並び、かみ合わせであると、効率的にかむこともできませんし、様々な不具合が出てきます。ガタガタの歯並びであればブラッシングがしにくいため、むし歯、歯周病にもなりやすいですし、その他の不正咬合でも顎関節などにも支障をきたします。
歯並びのよい・悪いを見極めるポイントさえ分かれば、自分でも鏡を見ながらある程度の確認は可能になります。ご自分や家族の歯並びをチェックしてみるのもいいでしょう。もしも悪い歯並び・かみ合わせに当てはまったり、気になる箇所があるようならお気軽にご相談ください。