災害時における口腔ケアの重要性と具体的な対策
2025年8月30日
災害時には、食料や水の確保、避難生活の整備が優先されがちで、口腔ケアが疎かになりやすいです。しかし、適切な口腔ケアは、命を守るうえで非常に重要な役割を果たします。特に、高齢者や持病を持つ方は、口腔内が不潔な状態が続くことで、肺炎や全身疾患のリスクが高まるため、日常的なケアが求められます。今回は、災害時における口腔ケアがどんな効果をもたらすか、実際の対応策についてもご説明していきます。

① 肺炎予防のための口腔ケア
災害時に最も気をつけたいのが、肺炎の予防です。口の中が不潔になるのと肺炎とどのような関係があるのかと不思議に思われる方もいるかもしれませんが、お口の中が清潔でないと、細菌が増殖し、これが肺炎の原因となります。特に高齢者は、免疫力が低下しているため、細菌が気管に入り込みやすく、誤嚥性肺炎を引き起こすリスクが高くなります。避難生活が長引くほど、そのリスクはさらに増大します。したがって、災害時でも歯みがきを欠かさないことが、全身の健康を守るために非常に重要です。
②入れ歯のケア
入れ歯を使っている方は、入れ歯のケアも忘れてはいけません。実際の災害現場ではなかなか難しいところもあるかもしれませんが、食後には必ず入れ歯を取り外し、流水で洗浄する習慣を持つことを忘れないようにしましょう。また、夜寝るときには入れ歯を外し、清潔な状態で保管することで、口腔内の菌の繁殖を防ぐことができます。災害時には水が不足することも考えられるため、ガーゼで食べ物の残りや汚れを拭き取ることも有効でしょう。これにより、口腔内を清潔に保ち、肺炎やその他の疾患のリスクを軽減できます。
③歯ブラシがない場合の対応
災害時には、歯ブラシが手元にない場合も想定されます。その場合でも、食後に少量の水やお茶でうがいをすることで、口内の汚れをある程度除去することが可能です。また、ハンカチやティッシュを使って歯垢(プラーク)を拭き取る方法も効果的です。これにより、細菌の増殖を抑え、むし歯や歯周病の進行を防ぐことができます。可能であれば、避難袋の中に簡易的な口腔ケア用品を常備しておくと、安心でしょう。
④だ液の分泌を促す工夫
だ液は、口腔内の健康を保つために欠かせない役割を果たしています。だ液には、細菌を洗い流す働きがあるため、だ液の分泌を促すことが重要です。災害時のストレスや脱水症状によって、だ液の分泌が減少することがありますが、耳の下、ほお、あごの下を手でもんだり、温めたりすることで、だ液の分泌を促進できます。これにより、自然な方法でお口の中の細菌を減らし、口腔内の健康を保つことができます。
⑤水が少ない場合の歯みがき方法
水の供給が限られる災害時でも、少量の水で効果的に歯みがきを行う方法を知っておくと便利です。まず、約30mlの水を用意し、歯ブラシを軽く濡らしてから歯みがきを行います。歯みがき中にティッシュで歯ブラシの汚れを拭き取りながら進めると、より効率的です。最後に、少量の水を2~3回に分けて口に含み、すすぎます。また、液体歯みがきや洗口液がある場合は、それらを使用することで水を節約しながら口腔内を清潔に保つことができます。うがい薬もお口の中を清潔に保つのに効果的です。
⑥キシリトールガムの活用
災害時には、水が全く手に入らない状況も考えられます。そのような場合でも、キシリトールなどのノンシュガーのガムをかむことで口腔内の健康を保つことが可能です。キシリトールは、虫歯の原因菌であるミュータンス菌の活動を抑制し、口腔内を清潔に保つ効果があります。また、ガムをかむことでだ液の分泌が促進され、自然な洗浄効果が期待できます。マウスウォッシュを併用することで、口腔内をリフレッシュし、細菌の繁殖を防ぐことができます。
⑦災害時の口腔ケアのまとめ
災害時には、お口のケアを疎かにしないことが、健康を守るために重要です。特に高齢者や持病を持つ方は、口腔ケアを怠ることで全身の健康に悪影響を及ぼすリスクが高まります。日常的に災害に備え、少量の水や代替品でのケア方法を習得しておくことが大切です。また、キシリトール入りのガムやマウスウォッシュなど、非常時に役立つアイテムを備えておくことも有効です。
非常時でも安心して過ごせるよう、事前に適切な対策を練っておくことをおすすめします。

【OCEAN歯科からのメッセージ】
災害時の口腔ケアは、日常のケアと同様に重要です。しかし、災害時の特殊な環境下では、普段とは異なる工夫が必要となります。普段から災害時を想定して防災グッズを用意してある方も多いかもしれませんが、そのなかに口腔ケアに必要な物品を準備しておいてもよいでしょう。例えば、非常時の持ち出し袋に歯ブラシや歯みがき粉、液体歯みがき、キシリトールガムを備えておくのもひとつのアイデアです。また、災害時に急に歯が痛くなったとしても、緊急時にはなかなか対応できるとは限りません。そのため、定期的に歯科医院でのチェックアップを受けることも大切です。
日常の口腔ケアに加え、災害時の口腔ケアに対する備えも万全にしておきましょう。
災害はいつ起こるかわかりませんが、事前に準備をすることで、非常時でも健康を守っていきましょう。
外科手術の前には歯科治療が必要?お口のケアと外科手術の知られざる関係
2025年8月10日

「外科手術を受ける前に、歯科でむし歯の治療を済ませるように言われた」という話を聞いたことはありませんか?実は、むし歯だけではなく、外科手術の前には歯科治療が必要になることがよくあります。それはいったいなぜなのでしょうか?
今回は、外科手術の合併症と口腔ケアの関係について詳しく解説します。
【手術前に注意すべき口腔内の細菌とは?】
口の中に細菌がいることは、なんとなくはご存知な方も多いのではないでしょうか。
実は、口の中には数百種類の細菌が存在しています。健康な状態ではバランスが保たれていますが、むし歯や歯周病があると、細菌が血流に乗って全身に広がるリスクがあります。
特に、以下のような細菌には注意が必要です。
・歯周病菌(P. gingivalis、T. forsythia など):血流に入り、心臓病や糖尿病を悪化させる可能性がある
・むし歯菌(S. mutans など):手術後の免疫低下時に感染を引き起こすことがある
・口腔内常在菌:手術後の誤嚥性肺炎や創部感染の原因となる
以上のように、口の中にいる細菌をできるだけ手術前に少なくしておくことが様々なリスクを減らすことにつながるのです。
【もしグラついた歯があったなら】
グラついた歯があるまま外科手術をしてしまうと、手術中の気管挿管(麻酔時に管を挿入する処置)で歯が折れたり、誤嚥してしまうリスクがあります。特に、全身麻酔を伴う手術では、次のような影響が考えられます。
・抜けそうな歯が気管に入る危険性
・手術中の歯の破損による誤嚥や窒息のリスク
・術後の感染症リスクの増加
このようなリスクを回避するためにも、グラついた歯がある場合、事前に歯科医師の判断を仰ぎ、抜歯を検討する必要があります。
【手術前に受けるべき歯科治療とは?】
手術前には、以下のような歯科治療が推奨されます。
・むし歯治療:進行した虫歯は感染源になるため、できるだけ治療を済ませる
・歯周病治療:歯周病があると術後感染リスクが高まるため、クリーニングや治療を行う
・グラついた歯の処置:必要に応じて抜歯や固定処置を行う
・口腔清掃指導:術前の口腔ケアを強化し、細菌数を減らす
【手術前の歯科治療の具体的な流れ】
では、手術前に歯科治療を受ける場合は具体的にどのような流れになるのか示していきましょう。
- 手術前の歯科検診(口腔内の状態をチェック)
- 必要な治療の計画(むし歯や歯周病の治療、抜歯の検討)
- 治療の実施(クリーニング、詰め物や被せ物の調整など)
- 手術前の最終チェック(術前に問題がないか再確認)
- 術後のフォローアップ(手術後の口腔ケア指導)
心臓の手術を受ける予定の患者さんが、術前検査で重度の歯周病が見つかったケースについてご説明していきましょう。
歯科治療を行わずに手術を受けた場合、細菌が血流に入り感染性心内膜炎を引き起こすリスクがありました。そのため、術前に歯周病の治療を行い、感染リスクを減らしたことで、無事に手術を成功させることができます。
このように、手術前の口腔ケアは命を守る重要な役割を果たします。
【日頃の歯科定期検診と治療のメリット】
日頃から定期的に歯科検診を受け、適切な治療をしておくことで、手術前に慌てる必要がなくなります。
具体的には
・むし歯や歯周病の早期発見・早期治療ができる
状態にもよりますが、むし歯や歯周病の治療というものは1日で治せるものばかりではありません。状態によっては長期にわたって治療をする必要性があるものも、もちろんあります。
ですので、日頃からのこまめなケアが重要になってくるのです。
・手術前に追加の治療が必要になるリスクを減らせる
全身疾患の手術前というのは、からだの状態も悪く、歯科医院にこまめに通う時間や元気がない場合もあるでしょう。歯科医院での治療がすでに終わっている状態であれば、手術前にわざわざ追加で治療する必要もなくなりますので、スムーズに手術を受けることができます。
・全身の健康を維持し、手術後の回復を早める
特に、持病がある人や高齢者は、定期的な歯科検診がより重要になります。
細菌感染のリスクも減らせますし、術後の回復にも影響してくることでしょう。
【手術前の口腔ケアの具体的なチェックリスト】
手術前に口腔環境を整えるために、以下の項目をチェックしましょう。
・むし歯がないか確認する
・歯周病の進行状況をチェックする
・グラついている歯がないか確認する
・詰め物や被せ物の状態をチェックする
・口腔内の清掃状態を確認し、必要に応じてクリーニングを受ける
・舌の状態を確認し、白い苔(舌苔)が多い場合は適切なケアを行う
・口臭の原因を特定し、適切な対処を行う
これらのチェックを受けることで、手術時のリスクを最小限に抑えることができます。
【どんな人が特に注意すべきか?】
特に以下のような人は、手術前の口腔ケアを徹底する必要があります。
・高齢者:免疫力が低下しており、感染症にかかりやすい
・糖尿病:血糖コントロールが悪いと、歯周病が進行しやすい
・心臓病:口腔内の細菌が心臓に影響を与える可能性がある
・がん:抗がん剤治療や放射線治療により、口腔内の健康が悪化しやすい
・透析:免疫力が低下しているため、感染症のリスクが高い
【歯科医院でのチェック項目】
歯科医院では、以下のようなチェックを行います。
・歯周ポケットの深さの測定(歯周病の進行度を確認)
・詰め物や被せ物の状態確認(破損や隙間がないかチェック)
・ぐらついた歯の確認(必要なら固定や抜歯を検討)
・口腔内の細菌量の評価(クリーニングや指導を実施)
・かみ合わせのチェック(不適切な咬み合わせがある場合は調整)
【手術後の口腔ケアの重要性】
手術後は免疫力が低下し、感染症のリスクが高まります。そのため、手術後も口腔ケアを徹底することが重要です。
・毎日の歯みがきを丁寧に行う
・口腔内の保湿を心がける(唾液の分泌が減るため)
・やわらかい歯ブラシや低刺激の歯磨き粉を使用する
・食後はしっかりうがいをする
【手術後に起こりやすい口腔トラブル】
手術後は以下のような口腔トラブルが起こる可能性があります。
・ドライマウス:唾液分泌が減少し、口腔内が乾燥する
・免疫低下による感染:口内炎や歯周病の悪化が見られる
・食事のしにくさ:術後の体調不良により、食事がしづらくなる
【回復を早めるための口腔ケア方法】
手術後の回復を早めるためには、以下のようなケアを行うと良いでしょう。
・保湿ケア:口腔用保湿ジェルやスプレーを使用する
・食事の工夫:やわらかく、飲み込みやすい食事を選ぶ
・口腔体操:舌や頬を動かし、唾液の分泌を促す
【手術前の歯科治療が推奨される具体的な病気】
手術前の歯科治療が特に推奨される病気には、以下のようなものがあります。
- 心臓病(心臓弁膜症・狭心症):感染性心内膜炎のリスクを減らす
- 糖尿病:血糖コントロールを安定させるために歯周病を管理
- がん治療:化学療法・放射線治療による口腔内トラブルを予防
- 人工関節置換術:手術後の感染リスクを低減
手術前の歯科治療を徹底し、安心して手術に臨みましょう。

【OCEAN歯科からのメッセージ】
全身の健康を守るためにも、日頃からのこまめなお口のケアが重要なことはご理解いただけたでしょうか。
いきなり外科手術が必要となっても慌てなくていいように、こまめな歯科医院での定期検診や歯科治療をおすすめします。手術に備えてだけでなくとも、常にお口の健康を守れるようにしておきましょう。