大人になるとなりやすいむし歯?!根面う蝕ってどんなもの?
2024年9月24日
昔に比べて、みなさんがお口の健康に注意されるようになって子どものむし歯は減少傾向にあります。しかし、その一方で高齢者の間で「大人のむし歯」が注目されているのをご存知でしょうか?
「8020運動」というの80歳で歯が20本以上残っている状態を目指そうという活動が盛んに行われてきて、歯が残っている割合というのは高くなっています。しかし、残っている歯がむし歯になっている方も少なくありません。特に、大人のむし歯ともいわれる「根面う蝕」に関しては、増えているという調査結果もあります。大人はむし歯というよりも、歯周病などの対策をきちんとしなければと思われる方も多いと思いますが、年齢が上がるにつれて、歯周病リスクと同様にむし歯のリスクもどんどん高まっていきます。今回は、特に中高年の方が注意していくべき大人のむし歯である「根面う蝕」についてご説明していただきます。
【根面う蝕ってどんなもの?】
う蝕とは、むし歯のことです。ですので、根面う蝕とは歯の根っこの面にできたむし歯のことを意味します。本来ならば、歯の根っこは歯ぐきに埋もれていて見えることはありません。しかしながら、加齢や歯周病などにより歯の根っこが露出してきて、その部分にむし歯ができてしまうのです。
むし歯のできるメカニズムというのは、大人も子供も一緒です。
通常、歯の頭の部分は硬いエナメル質と呼ばれる組織で覆われています。このエナメル質は酸に溶けにくく、とても硬いものであり、その下にある象牙質という組織を包んでいます。象牙質はエナメル質に比べて酸に弱いため、むし歯になりやすいので、一度むし歯になってしまった場合の進行も早い傾向があります。
歯の根っこにはエナメル質はないため、表面は象牙質で覆われています。本来ならば歯ぐきで覆われているため直接象牙質が刺激をうけることはないのですが、中高年の方は歯ぐきのラインが下がってきているため、歯ぐきで覆われていた象牙質が食べ物や飲み物などの酸にさらされます。つまり、歯の根っこの表面が溶かされて根面う蝕ができてしまうのです。歯ぐきがしっかりしているということは、歯の根っこのガードをしてくれているということにもなるんですね。
【根面う蝕になりやすい人の特徴】
①歯周病が進行している
根面う蝕は歯の根っこのむし歯ですので、歯周病が進行して、歯ぐきが下がっている人は根面う蝕になりやすくなります。
歯周病が進行すると、歯周病の細菌によって歯ぐきが腫れるだけでなく、顎の骨が溶けて、最終的には歯ぐきも下がってしまいます。結果として、歯がグラついたりかみしめると違和感がある感じがするんですね。歯周病の進行は痛みを伴わないため、気づいた時には歯周病が重症化していることも多く見られます。
②間違ったブラッシング
ゴシゴシと力強く歯ブラシをしている方は、ブラシの圧が強すぎたりして歯ぐきを傷つけている可能性があります。歯ぐきは思っている以上にデリケートな組織ですので、力を入れすぎたブラッシングによって歯ぐきを傷つけてしまい、それが原因となって歯ぐきが下がってしまうこともあります。その結果、歯の根っこが露出してしまい根面う蝕になることがあります。
一般的には、歯ブラシの適正なブラッシング圧は100g~200g程度です。分かりやすいのは、歯ブラシの毛先を歯に当てたときに毛先が広がらないくらいの力加減です。実際にブラッシングの際にどのくらいの圧なのか、力加減をみてみるのもいいでしょう。思った以上に力が入っている方も多いのではないでしょうか。
最近では、お口のケアを頑張りすぎて、このように歯を磨きすぎている方も少なくありません。間違った磨き方は習慣になっているため、ご自分ではなかなか気づかないものです。頑張って磨いているのに歯ぐきが下がった気がする方や、思い当たる症状のある方は、歯科医院でご自身のブラッシング方法について、一度指導を受けてみるのもいいでしょう。
③歯ぎしりや食いしばる癖がある
歯ぎしりや食いしばりの力というは、実はとても大きな力がかかっています。強い方になると、70kgを超えるような力がかかることもあり、気づかないうちに歯や歯を支える骨にダメージを与えている可能性があります。
もしも日頃から歯ぎしりや食いしばりをしていると自覚がある場合は、歯槽骨(歯を支える骨)の吸収や、歯肉退縮(歯茎が下がる現象)を起こす原因になりますので、歯科医院でチェックを受けるのをおすすめします。骨や歯ぐきは一度下がってしまうと、なかなか元には戻りません。歯ぎしりをよくする方は、寝るときにマウスピースを装着するなどして歯を保護することで歯肉退縮を防ぐことができますのでご相談ください。
④加齢変化で歯ぐきが下がってきた
歯周病も進行しておらず、特に歯ぐきに異常がなくても、年齢を重ねることで徐々に歯を支えている歯槽骨が痩せていきます。加齢変化の一種です。歯を支える骨が痩せてしまうと、それに伴い歯肉も衰えて下がってきてしまいます。
歯周病などの病気が原因で歯肉が退縮することを「病的歯肉退縮」と呼びますが、一方で加齢による歯肉退縮は「生理的退縮」と呼ばれ、一般的には10年で2ミリ程度、歯肉が退縮すると言われています。加齢変化はどうしようもないものですが、その変化を最低限に抑えるためには定期的な歯科医院での検診やメンテナンスも重要とされています。
⑤口の中が乾燥している(ドライマウス)
口の中は通常、唾液によって潤いが保たれています。唾液の分泌が低下して、お口の中が口が乾いている症状のことを「ドライマウス(口腔乾燥症)」といいますが、高齢になるほどその症状が強くなる方も多くなります。実際に年々、口の中の潤いが減少していると感じている方もいらっしゃるかもしれません。
唾液は加齢によっても唾液を分泌する機能が低下することはありますが、薬の副作用やストレス、緊張によっても唾液の量や質は変化します。ドキドキしたときは口の中が乾燥しますよね。これは交感神経が刺激されているので起こります。
また、全身の病気でいうと、糖尿病や甲状腺機能障害、シェーグレン症候群などが影響している場合もあります。口の乾燥状態は、単一の原因があることもありますが、加齢や全身の病気、服用薬剤が複合的に唾液分泌に影響すると考えられています。
お口の中のが乾燥するとむし歯にはもちろんなりやすくなりますが、歯周病も進行しやすくなりますし、細菌が増加しやすいので口臭の原因にもなります。
【根面う蝕を防ぐにはどうしたらいいの?】
根面う蝕は歯の根っこのむし歯です。ですので、まず第一には歯の根っこを露出させないことが重要です。つまり、歯ぐきが下がらないようにしていくことが大事になってきます。
歯周病の症状がある場合には、これ以上進行しないために歯周病の治療が必要ですし、ブラッシングの圧が強い人は歯科医院で適切なブラッシング圧を身につけることもいいでしょう。
歯ぎしりや食いしばりの癖がある方は、その癖に気づいてできるためやめるように努めたり、マウピースを装着してみるのもいいでしょう。加齢変化や全身疾患によるお口の変化は定期的な歯科医院での検診で早期に発見もできますし、対応が可能な場合も多くあります。
歯の根っこが出るのを防ぐためには、早めに歯科医院を受診して、自分の口の状態を把握し、適切な処置を受けるのも重要です。
また、むし歯に有効な成分として皆さんもご存知のフッ素がありますが、ドラックストアなどでも高濃度のフッ素(1,000~1,500ppm)が配合された歯磨き剤が置いてあります。そのような商品をうまく活用するのも一つの手です。
【OCEAN歯科からのメッセージ】
歯ぐきが下がって歯が長くなってきたなと思う方も少なくないでしょう。今回は、そのような方がなりやすい歯の根っこのむし歯についてご説明しました。
実際にご自分では見ても分からないことも多いと思います。少しでも心当たりがあったり、不安に思われることがありましたらお気軽にご相談ください。