お子さんとの食器の共用とむし歯の予防について
2024年10月11日
小さなお子さんにご自分の使っているスプーンやお箸などでそのまま食べさせることについて、どのように考えていくべきか悩まれている方も多いのではないでしょうか?
令和5年8月31日に日本口腔衛生学会から「乳幼児期における親との食器共有について」の新しい声明が発表されました。今回は、この声明をもとに、実際にどのようにご家庭で食器の共用について考えていけばいいのかを解説していきます。
【日本口腔衛生学会から発表された内容】
以下の「」内は、口腔衛生学会の声明より引用したものです。
(☞に続く文章は当院による解説です)
①食器の共有は必ずしもダメなものではない?
「以前から、親から子どもへのう蝕原因菌の感染を予防するために、親とスプーンやコップなどの食器の共有を避けるようにとの情報が広がっています。しかし、食器の共有をしないことでう蝕予防できるということの科学的根拠は必ずしも強いものではありません。最近、親のだ液に接触することが子どものアレルギーを予防する可能性を示す研究内容が報道されました。それに付随し、親の唾液からう蝕の原因になるミュータンスレンサ球菌が子どもに感染するリスクを高めると報道で触れられていますので、情報発信をいたします。」
☞お子さんとの食器の共有についてですが、むし歯の予防ができるという根拠は必ずしも強いものではなく、親のだ液にお子さんが接触することでアレルギー予防の可能性があるという研究結果が報道されています。しかしながら、親のだ液にはむし歯の原因となる細菌(ミュータンスレンサ球菌)が含まれているため、むし歯になるリスクは上がることが知られています。
②親からの口腔細菌感染は食器の共有の前から起こっている
「最近の研究で、生後4か月に母親の口腔細菌が子どもに伝播していることが確認されています。食器の共有は離乳食開始時期の生後5~6か月頃から始まりますが、それ以前から親から子どもに口腔細菌は感染しているのです。日々の親子のスキンシップを通して子どもは親の唾液に接触しますので、食器の共有を避けるなどの方法で口腔細菌の感染を防ぐことを気にしすぎる必要はありません。」
☞今まで、むし歯予防の観点から食器を分けることが良いとされてきましたが、研究が進んで、必ずしもそれがお子さんへのむし歯の細菌感染を防ぐわけではないことがわかってきたんですね。離乳食開始前にはもうすでに、日々のお子さんとの関わりの中で親の口の中の細菌に感染してしまっているのです。ですので、神経質になりすぎず、無理のない範囲で食事のスタイルを確立していくのがいいでしょう。
③むし歯の原因菌は、ミュータンスレンサ球菌だけではない
「親のミュータンスレンサ球菌が子どもに感染することは複数の研究で確認されています。しかし口腔内には数百種以上の細菌が存在し、ミュータンスレンサ球菌だけでなく多くの口腔細菌が酸を産生し、う蝕の原因となりますので、ミュータンス連鎖球菌だけがう蝕の原因菌ではありません。」
☞親の口の中にいるむし歯菌であるミュータンスレンサ球菌がお子さんに感染することは確かですが、それだけがむし歯の原因というわけではないということです。口の中にはむし歯菌であるミュータンスレンサ球菌以外にも多くの細菌がいて、それぞれのお口の中では異なる細菌の構成がなされていて、むし歯の原因となるのです。
④食器の共有に気を付けていても、子どものう蝕に差はなかった
「う蝕は砂糖摂取や歯みがきなど様々な要因で起こるため、食器の共有と子どものう蝕の関連を調べる際にはそうした要因を考慮する必要があります。う蝕に関連する複数の要因を調べた日本の研究では、3歳児において親との食器共有とう蝕との関連性は認められていません。」
☞食器の共用に気をつけていても、お子さんにできるむし歯には差がないというのは意外な研究結果ですね。お子さんのむし歯予防のためには、食べ物の中に含まれる砂糖や日々の歯みがきなど、大人の方の虫歯予防と同様なことをやはり気をつけなければなりません。
⑤子どものむし歯予防のために
「親から子どもに口腔細菌が伝播したとしても、砂糖の摂取を控え、親が毎日仕上げみがきを行って歯垢を除去し、またフッ化物を利用することでう蝕を予防することができます。特に、フッ化物の利用は多くの論文でう蝕予防効果が確認されている方法です。」
☞親の口の中にいるむし歯菌のミュータンスレンサ球菌がお子さんに感染することは確かです。ですが、お子さんに与える食事やおやつに気をつけ、日々の歯みがき、フッ素入り歯みがき粉の使用などにより、お子さんのむし歯予防をすることはできます。皆さんもご存知のように、フッ素は虫歯予防に効果的ですので、日々のお口のケアに積極的に取り入れていきたいものです。
【むし歯予防にとって大事なこと】
むし歯は生活習慣や食べ物など、さまざまな要因が絡み合って発生します。そのため、これだけしておけば安心!大丈夫!ということはありません。
お子さんのむし歯を予防しようとした場合、1番大事になってくるのが日々の生活習慣でしょう。
まずは、
- 日々の歯みがきを適切に行うこと
- フッ化物配合歯磨剤を使用すること
- お菓子などの砂糖が含まれているものをダラダラ食べない
- 砂糖が含まれる甘い飲み物をダラダラと与えない
- 寝る前の夜食などの見直し
などのことを気をつけてみましょう。
【OCEAN歯科からのメッセージ】
自分では気をつけているつもりでも、気がつかないうちに実はむし歯を作ってしまう習慣をしてしまっていることもあります。お子さんの機嫌を直すためだったり、大人しくしておいてくれるからと、ついつい飴やジュースなどを与えがちになることもあるかもしれません。
たまにならいいのですが、それが習慣になると簡単にむし歯を作ってしまいます。
過度に神経質になる必要はありませんが、食器の共有に限らず、日々のむし歯予防にも気をつけていきましょう。何かご不明点があればお気軽にご相談ください。
歯科医院での定期検診もうまく利用して、むし歯の予防をしていきましょう。